前回までのあらすじ。
ハンドルかじりながら。
病院に到着。
病院に到着したお風呂屋さん。
診察券・・・・・しんさ・・・・・ぐふぅっ!!
通常であれば、財布の中に免許証やら診察券やら保険証が入っているのですが、財布一式持って行ったら今の状態では紛失する可能性が凄く高い訳です。
なので、必要最低限の診察券だけを所持していけばいいな?と、自分に納得させました。
ヨタヨタと病院の中に入っていくお風呂屋さん。
7時頃とは言え、時間外受診です。
守衛さんに先程電話したお風呂屋さんですが・・・・・・中入って良いですか・・・・・・?
と、窓越しに聞きます。
「あい、じゃ、診察券を。」
愛想も何も無い感じが強くにじみ出ている守衛さんからで事務的に診察券を求められます。
ここまでは想定内。
「おでがいじまず・・・・・・・・・」
診察券を渡し、中に入ろうとしたお風呂屋さんを守衛さんが止めます。
「あ、保険証ももらえますか?」
「え‘・・・・・・・・。」
お風呂屋さん的には会計の時に保険証を提示するつもりでいたんですよね。
だって現状だと紛失する可能性が激高ですし。
しかし、だ、いや、必要なのは、貴方のお仕事上必要なのかもしれないが!
今、こんだけ脂汗出して中腰で蹲っている人間に対し、貴方の要望を求めるのか?!
「えっと・・・・・・・・。」
喧嘩もしたくないので、中腰で守衛さんを見上げる様にアピールします。
ほら、あたし、こんだけ、今、こんだけ具合悪そうなの!
分かるよね!?
で、ほら、もう、ね、歩くのもきついの!!
ここから駐車場までかなりの距離でしょう!?
取りに行くの!?
そこは臨機応変に!?
ね!?
行けばいいの!?
空気読め!?
な!?
口には出せない必死のアイコンタクトで守衛さんに限界まで懐きます。
プライドも何もありません。
だってもう一歩も動けない(動きたくない)んですもの。
そんな生まれたての小鹿の様なお風呂屋さんを守衛さんは冷ややかな目で見下ろしています。
(なにやってんだ?おめぇ・・・・・・・)
目は口程に物を言う。
言葉には出しておりませんでしたが、守衛さんの目は確かにこう言っておりました。
その目を見てお風呂屋さんは悟ります。
ダメだ、この人に医療介護福祉的な精神を求めても時間の無駄だ。
と。
これは多少遠回りしたとしても押し問答している時間の方が勿体ない。
取りに行ってやる!!
ちくそー!!
駐車場までヨタヨタと移動していくお風呂屋さん。
そこに背後から声を掛けられます。
「お風呂屋さんですね!?どこ行くんですか!?」
振り返ると白衣を来た看護師さんが立っていて、小走りでお風呂屋さんに向かって来る姿が見えました。
(え・・・?誰?)
苦痛で目が半分閉じておりますが、声を掛けてくれた看護師さんに見覚えはありません。
駐車場で動けなくなっていたお風呂屋さんにあっという間に追いつき更に声を掛けます。
「さっき電話くれたお風呂屋さんですよね!?あまり電話口が辛そうだったから待ってたんです!そんな状態でどこに行くんですか!?」
「え・・・・・あ、すみまぜん・・・・・・保険証を取り・・・・に・・・・・・・・・・」
その瞬間看護師さんの顔色が変わるのが分かりました。
駐車場から大声で守衛さんに声を掛けます。
「守衛さん!保険証なんて後でいいから!!お風呂屋さん、まず病院へ!先生も待ってます!!その状態で後歩かないで下さい!車椅子に乗って!!」
駐車場から支えられながら病院の玄関まで一緒に来てくれて車椅子に乗せてもらいました。
守衛さんの姿は見えません。
あぁ・・・・・・・・有難い・・・・・・・・。
白衣の天使はここにいたんですね・・・・・・・・・。
余り病気なんてした時はありませんが、こんな心の籠った看護を受けた時なんて初めてです。
お風呂屋さんは車椅子に乗って診察室の中へ入って行ったのでした・・・・・・・・。